家を建てた

家を建てた

何一つ便利なことがないくそ田舎に大きな(当社比)平屋を建てた。

 

家を建てたいというのは、結婚してすぐに話がでていた。

結婚当初は普通に都会のマンションに住んでいたが、私も夫も戸建て育ちであり、なんとなく仮住まい感が拭えず、更新料を払うくらいならそれまでに家を建てよう!とさくさく話はまとまった。

 

家を建てようと思っている、と両親に話をすると、両家とも喜んでそれぞれが所有する土地を提示してくれた。

「所有する土地」と言うと聞こえはいいが、その全ては山・田・畑であり、こんなところに家を建てたらぽつんと一軒家の取材が来るのでは・・・・?みたいな場所もあった。

それでも私達が建てたい家は「大きな平屋」だったのでちょうどよく、その中の一つの土地から選ばせてもらった。

 

田舎の田んぼに家を建てるというのは簡単そうだが諸手続きがややこしく、このコスパの悪い相談に最後まで付き合ってくれたのが唯一今の住宅メーカーだった。

そんなにブランドにも性能にも拘りはなかったのに、結局超大手メーカーになったが、何一つ文句のない仕上がりになったのはそのおかげもあるかもしれない。

(余談だが、某メーカーの営業は2人に会って2人とも「いやだ・・・!」となったのでもう社風が私と合わないんだなと早々に候補から外れた)

 

家の造りは今のところ何も文句がない出来になった。

夫は間取りに拘り、毎日図面とにらめっこしながら、最終的には自分で図面を書いて設計士に提出していた。(設計士さんにも「話が早いです!」と感謝されていた。笑)

私はどちらかというと内装に興味があったので、決め事をうまく分担できたのも揉めずに済んだ一因かもしれない。

土地代がかからなかった分、建物に全振りできたので、ほぼ何も妥協することなく家造りができたのもよかった。

 

この家を建てたことは何も後悔はしていないが、この土地でよかったのかは今もわからない。

広くて大きな家を建て、広大な庭(畑)も手に入れた。両実家も近くて心強い。

それでもよかったのかと不安になるのは子供のことがあるからだ。

この地は過疎化が顕著で、子供どころか私と同年代も見かけない。

中学校は廃校になり、小学校も現時点で1学年に10人もいない。

中学受験をすればどうかと言われたこともあるが、現実的な通学範囲に私学はない。

私達のでかい家を建てたいという希望を優先したばかりに、我が子からいろんな可能性や友達を奪ってしまったのではないかと考えてしまう。

 

周りは、ここにいるとのびのびと育つね、と言ってくれる。(それしか言うことがないのかもしれないが)

のびのびと心優しい子に育ってくれればいいと私は思うが、それでも社会に出ると競争がある。いろんなコミュニケーションがある。それを10人の中で学ぶことができるのだろうか。そんな考えても仕方のない先のことも不安になる。

じゃあ最初からこんなところに住むなよという話ではあるが、夫は都心での生活を望まなかった。自然が好きな夫はこの地での生活を気に入っている。

私はまだ生まれてもなかった子供の遠い未来のことより、今の夫の希望を優先した。

夫がやりたいことをやり、楽しそうな夫と暮らしたいと思ったのだ。

その代わり、子供がどんな選択をしても応援できるようにお金はためておくね!というスタンスで働く意欲にも繋げることにした。

ただし、諸事情で、大きな都市改革でもない限りおそらくこの家は売却することが難しい。そうなると我が家は「資産」ではなく本当にただの「贅沢品」なので、老人ホームに入らず我が家で死ねるように私達もがんばらなくてはいけない・・・。

 

それでも、一番力を入れた広いリビングダイニングで子供が一生懸命歩き回っているのを見たり、両家のじじばばが孫にすぐ会えてうれしそうだったり、生い先短いひいじじが毎日ひ孫と楽しそうにしている様子を見るとここに建ててよかったなとは思う。

 

20年もすると、娘は早い終バスを言い訳になかなか帰ってこなくなるかもしれない。「こんなくそ田舎」と言って満を持して大学進学とともに出ていくかもしれない。

そういう未来が見えていても、今の私はこの家を建ててよかったなと思えている。